僕の大好きならいおにいさん

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これは上記のきあさんのイラストを基に蒼鉛が妄想を広げて書いた物です。

20190725 きあさんが挿絵を描いてくださいました……ありがとうございます!!
20190731 きあさんが挿絵を追加して下さいました! 重ね重ね御礼申し上げます、ありがとうございます!

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 らいおにいさん。僕の大好きならいおにいさん。鈍くて、少し芋臭いらいおにいさん。僕をかわいがってくれるらいおにいさん。男らしく隆々とした筋肉と、僕よりもスイカ二つ分上背のあるらいおにいさん。頼りがいがある、でもどこか抜けているらいおにいさん。ほのかに汗と、土と、毛皮の匂いがするらいおにいさん。たまに、僕が赤ん坊のように縋りつくと、
 「んー? 今日はあまえんぼかぁ?」
 と言って、拒まずに抱え込んで、そのごつい手で、優しく、頭を搔き撫でてくれるらいおにいさん。いつでも笑顔で、たまにドジを踏むらいおにいさん。僕の、愛おしい大好きならいおにいさん。
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 恋では無いのかもしれない。その広い手で、丸太のような腕で、緩やかに呼吸する豊かな乳で、その奥で確かに脈動する心の臓で、誇り高く薫る黄金の毛並みで、腹を震わせ響く声で、愚図る僕をあやしてほしいと願う、この胸に迸る劣情と酷く甘美な疼き。これを、恋という言葉に当てはめて良いものか、僕には確証が持てない。ただ、たった今この身、この心がらいおにいさんを求めている。その姿を見る度、その体に手を掠める度、その腕に掻き抱かれる度、歓喜と悦楽に僕の頬はほころび、僕の胸は早鐘を打つ。

 らいおにいさんは鈍感だから、僕の想いに気がつくことはないだろう。だからこそ、諦念は僕の疼きを焼きつけて離すことは無くて、だからこそ、今日もらいおにいさんは疑うこと無く僕を包み込んでくれる。名残惜しく離れ、見えたらいおにいさんの顔に差す、一条の陰りは、都合の良い見間違いだろうか。

 らいおにいさんと朝顔の種を蒔いた。なにか一緒のことがしたくて、僕から誘って始めた事。余っている植木鉢の中から、らいおにいさんが二つ見繕ってきてくれた。二つ並べて、僕もらいおにいさんの隣に座って眺めていた。

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 らいおにいさんが扇風機の前でお腹を出して寝ていた事があった。高鼾を立ててぐっすりと眠っていて、少しのことでは起きる気配が無かった。端に寄った布団をかけ直そうと手に取ったが、露出した腹部から目が離せなくなった。毛に覆われた上からでもわかる筋肉の凹凸、そして下着の中へと茂る周りより濃い色の体毛。その立派な鬣と同じ色の、象徴的なライン。僕は布団を掴んだまま、その腹部に鼻先を埋めていた。ふが、と鼾が一際高く響き、顔のすぐ横を手がボリボリと搔き毟って行ったが、それだけであった。それを良いことに僕は肺腑をらいおにいさんの濃い愛しい匂いでいっぱいにした。心臓の音がやけにうるさかった。ふと目を覚ました時には布団は自分に掛かっていて、らいおにいさんは水を浴びていた。

 そのうちらいおにいさんが上の空であることが増えた。頻繁に植木鉢に躓いたり、水をやりすぎたりしている。僕が声を掛けると、慌てて取り繕い、何も無かったようなふりをする。一体、どうしたんだろう。何かあったのだったら相談してくれても良いのに。言えないことなのだろうか。僕は頼りないのだろうか。僕では不十分なのか。
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 思えば、これまでずっとこちらが頼って甘えてばかりで、向こうから頼られたことは少ない気がする。僕らは一方的な関係だったのだ。僕は彼から得るばかりで、何かを与えられていない。それが原因となって、僕は彼の中で頼られるだけの地位を得ていなかったのかもしれない。そう思うと、水を汲みに向かうらいおにいさんの背中がどこか遠く感じられて、情けなさに胸の奥が軋んだ。

 その日は前日に降った雨もあり、酷く蒸し暑い日だった。蝉は猛々しく吼え、庭は照る日に燃え、比して屋根の下は暗く空気は淀んでいた。らいおにいさんはいつにも増して虚空を見つめ、ランニングが毛皮に貼り付いていた。僕は何度目かの麦茶を注いでらいおにいさんの横に座った。突然視界がぶれ、らいおにいさんが僕に覆いかぶさってきていた。腕が掴まれ、微動だにすることができない。あまりに突然のことに全身が強張る。喰われる――――咄嗟に顔を上げるとらいおにいさんは、まるでこれまでに見たことが無い顔をしていた。硬く、獰猛で、追い詰められた獣のような……ただらいおにいさんの荒い呼吸のみが耳にうるさく響く。
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 「ーっ、フーッ、ぐるるっ…………」
 張り詰めた一瞬の後、次第に下がり行く眉尻。目を逸らすことはしないまま、らいおにいさんは、途方に暮れていた。
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 「ごめん……でも俺こんな気持ち……わかんなくて……」
 ぽたりぽたり、汗と混じった涙は塩味で、頬に落ちて熱い、冷たい……
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 僕は赤児のように胸に縋り付く、らいおにいさんの背筋を擦っている。手を伸ばしても回りきらない背中、とても広い、今は小さくも見える背中。とても暖かい背中。背負われるとすぐに眠くなる、僕の大好きな背中。僕が甘える度、そして離れる度、無視の出来ない喪失感を感じていたらいおにいさんは、その初めての気持ちの整理が付かないまま、衝動を積み重ねていたらしい。自分ではわからない感情を、晴らすために僕に甘えてくれる。僕を頼ってくれるらいおにいさんに、今もまた救われている。らいおにいさんはいつもこんな景色を見ていたのだろうか。よしよし、良い子、かわいい子……

 一頻り泣き腫らして赤い顔で、照れながら晴れやかに笑うらいおにいさん。僕の注いだ麦茶を一飲みするらいおにいさん。その喉の動き、響く音、全てが僕の愛おしいらいおにいさん。僕を抱き寄せて頬ずりする、満足げならいおにいさん。

 朝顔の蕾は、綻びはじめている。





深夜

 頭痛で一日床に伏した。夜になってやっと収まったと思ったら、今度は寝過ぎて目が冴えて眠れなくなった。布団の上に座して頭を巡らせた。息が詰まったような現状のこと。暗くてよく見えないこれからのこと。しにたい、の気持ちの正体と、やる気の無い自分の機械的な分析。ふと外の風が恋しくて、静かに戸を開けた。
 冬の迫る季節、上着の前を固く閉めて空を見上げる。おのずといろいろな音が届いてくる。虫の声、車の遠く走る風、葉の身を寄せ合うささやき。吸気が肺を冷やす。頭もより醒める。
 ちらほらと明るい窓がある。丑三つ時であってもこの時代だ。起きている人はいる。さすがに出歩くのは僕だけだけれども……。しばらくして川に出る、黒い水がじゃぶじゃぶと流れている。海と違ってずっと浅い事を知っている。海と違ってずっと素っ気なく流れていく。その無関心さは、僕には心地よい。海は恐ろしい。夜の海は僕の眼前に死そのものとして立ち現れる。その偉大なる抱擁をもって万物を呑み込まんとするかのようで、しかしただそこにある。真っ黒な水。この川よりもっとずっと黒い。母なる海は、ヒトの本性そのもののように昏い。海そのものとしての冷たさと、すべてを迎え入れる温かさを併せ持つ。僕は夜の海が嫌いだ。
 公園は電灯に無機質な黄みがかった白で照らされる。暗い角には何かが潜んでいそうで、その実何もいない。ブランコに腰を下ろす。鎖はきいと鳴く。ゆりかごにも似た前後運動は、僕に心地よい静けさをもたらす。古い記憶、星のように瞬いて蘇る。夏の日に花火をもって公園に来た。羽化したての蝉の、翡翠の白を目の当たりにした。特別感動はしなかった。ただそこにある現実だからなのか。
 静かに戸を開けると、暗い部屋が出迎える。上着を掛けて、やかんで湯を沸かす。じっと、待つ。昔に演劇をやっていたことがある。なにかしらの訓練として、湯の沸くプロセスを頭でなぞった。コンロの音と、静かに水が湯に変わる時。微細な泡が生まれ、昇り、弾けて消える。少しうるさくなるくらいで火を止めて、コップに注ぐ。湯気が立ち上る。
 僕はラジオを付けた。

#41

「……」
「あ、マガミさーん。ラーメン奢ってよ」
「今は、マガミって呼ぶな」
「え? あ、はい」
「……俺は……俺は……」
「マ……えっと。あーどうするんだこれ」
「ラーメン、ならまた今度やるから、さ」
「……う、す」

「セトアニキぃ~でござる」
「セットおにいちゃぁ~~ぶびゅっっ!? なんだよ殴るこたねぇだろぉ!」
「お前は悪意篭もりまくりなんだよ!」
「チッ、おいイツキ。やってやれ」
「え、えっ! 僕……?」
「ほら、セトアニキもきっと喜ぶでござるよ」
「えっと、じゃあ……セト、にぃ……?」
「……お、おう……!」
「ぅあざとい! クソッカワイイ奴は何やってもカワイイからずりぃよなクソ!」
「うわ! なんで砂を拙者に蹴ってくるでござるか」

「ドッカクジさ~ん、皆さん連れてきたっスよ~」
「おんしら何寝返っとるんじゃ阿呆め」
「え~だって御主人じゃないスか」
「なんかほっとけないですし」
「解らんでもねぇがちゃんとやれや。ワシは役割はキチンと果たすぜ、職人だからな」
「イツキ、おめぇさんは下がってな」
「! ぼ、僕も」
「おめぇさんが怪我しちゃかなわねぇんだよ俺たちはよ。大人しくしてな」
「……そんなの、嫌だよ……」

叔父の手紙

 叔父の家に泊まるのはこれが初めてでは無かったが、以前は母も一緒だったので、叔父と二人で過ごすというのは初めてのことだった。多少蝉が煩いのは気になるが、木陰の二階建てであり、虫を考えなければ暑い日でも過ごし良さそうであった。

 叔父は姉である母に似ず、極端に口数の少ない男だった。声も小さく、聞き返すようなことが殆どだったが、それで気を尖らすような短気では無かった。図体は横に縦に大きく、かといって肥満と言うわけでも無く、簡単に言えば壁だった。長く乱雑に伸びた毛で目元は暗く表情は判別しづらいものの、慣れればどうということはなかった。横の畑でものを育て、余ったものは近所と分けたり売ったりして暮らしを立てていた。

 僕は外で遊んだりするよりも近所にあった貸本の隅っこでで本を漁るような質だったから、母と違い叔父の静かであるのはかなり気楽だった。ただこちらには貸本が無いので、やることをしてしまうと手持ち無沙汰になるのは多少気が滅入った。確か叔父は大学を出ていた筈だったので、なにか本などあるかと問うてみた。書斎があるというのでそこでいろいろ漁ることにした。

 書斎は、夕日が良い具合に差し込むので僕はそこに籠もるようになったが、さて他にも何かあるかと思い時折は家の内を見て回ることにした。

 3度目の見回りで屋根裏への梯子を見つけた。屋根裏部屋は埃が積もり、もう何年も人の出入りが無いようだった。汚く曇った天窓から木漏れ日が差し込み、ぼんやりとした光が部屋の中を照らす。整頓されていながら雑多であるのはいかにも叔父らしく思われた。僕はそっと好奇心のままに物色を始めた。

 手を広げたほどの大きな地図や、折り目正しく丁寧に綴じ込まれた紙は、叔父の大学での研究についてのもののようだった。それらの山をより分けるとふと、小綺麗な缶が目に付いた。そっと開けてみると、たくさんの手紙が紐で縛られていた。齢十四の少年は少し逡巡したものの、やがてその紐をといた。

 読むとそれは恋仲からのものであった。あぁ、やめときゃぁよかったかなと思いはしたが手はそのまま動かした。叔父の飾り気の無い字とは違い流麗なものであったが、その小っ恥ずかしくなるような内容を読む内にどうやら男のようだった。さてそういえばあの大男には女の気がないとは思っていたが、はぁなるほどと合点がいった。歳ももう四十五を超すだろうによく隠しおおせたものだと感心もした。母は叔父には子がないのだと迷惑そうに零していたが、この様ではそれも仕方ない。誤って口を滑らせないよう自分に戒めを一つかけた。手紙は丁寧に元に戻した。

 その後も僕は書斎での生活を続け、叔父は相変わらず無口であった。ただ僕は叔父の事を注意深く見るようになり、機敏が以前より細かく読み取れるようになっていた。頭を搔くときは迷っている。僕が西瓜を食べると鼻が動く。きっと手紙の主もこのようにしていたのだと思うと、少しの満足感があった。そうしているとふと、彼のその後が気になった。手紙は相愛の内に途切れていた。僕は屋根裏に戻り住所を書き留めたが、遠いことに気がつき訪れる気は失せた。それに訪れて何になるかとも思った。そのままその事は忘れていた。

 僕が就職し暫くして叔父が倒れた。僕は見舞いに行った。しかし母はついて来なかったばかりか、僕の他には誰も来ていなかった。僕は叔父を哀れに思ったが、叔父は全く気にしていない様だった。夕日の入る病室でふと手紙のことを思い出した。どうしようかと思ったが、とりあえずその事を口に出した。叔父は珍しく目を丸くし、やがて頭を搔いた。曰くもう既に先立たれてしまったと。あの夏にはもうとうに居なくなっていたのだと。僕は肩すかしを食らった気分になった。それでも叔父は懐かしそうに目を細めていた。

 

世界最後の日

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 陳腐でチープな『世界最後の日』。でもそこに実際にあるのだから仕方が無い。月はもうすぐそこまで迫ってきている。

「穏やかなもんだね」
「確かにねぇ」

 幾つかの金持ちは宇宙に逃げ出そうとしたが、多くは邪魔が入って失敗したし、残りも長く生きて行けるはずも無い。コールドスリープなんて便利なものはまだ無い。地下に潜ろうという人もいたが、到底生き残れはしないとのことだ。つまり人類は間違いなく、絶滅する。

「月は案外不細工だねぇ」
「そんな言葉本当に聞く日が来るとは思わなかったな」
「あばた面とは、よく言ったもんだ」

 ここら辺は異常な地域だ。世界中がパニックになっているにも関わらず、ここらだけは皆穏やかな顔をしている。まぁ、それはここに蔓延っていたカルト的な宗教のお陰か。みんな殉教する、と嬉しそうだ。

「ちょっと奮発しちゃおっか」

 僕と彼が好きなシチュー。滅多に作らないけど、どうせ世も末だ。店はこんな日にも商売をする。いろいろ買いそろえていく。ネギに、じゃがいも。そしてチキン。生クリームは、あっただろうか。きれいに色づいた人参をかごに押し込む彼は、その黒いふさふさのしっぽをくゆらせる。

 帰ってきたときには、既に夕刻だった。不気味に空を覆う月の顔。さっきよりずっと大きい。今日の夜に世界は終わる。明るい月も、もう見納めだ。

シャンパンを開けようか」
「ロウソクでも灯すかい?」

 彼は楽しそうに笑う。僕も微笑みを溢す。

「なんたって世界最後の日だからね」
「楽しもうか」

 腹を満たした僕らは皿洗いを放棄した。

「アルコールが回ってるのかい」
「確かにいつもより心地よいかも、あ、そこ」

 僕らは裸で絡み合う。彼の指が僕の鱗を這ってくすぐったい。いよいよ風が強く窓を吹き付ける。

「どうせなら、つながったままで」

 大変に音がつんざく中で、どちらが先だったか、唇を重ねた。月は無事に地表を波打たせ、

ちんちんしろくまとガチャ

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「ねぇ、ちんちん見せてよ」
 ガチャゲー、俗に言うソシャゲというのは依存性、中毒性ともにとても悪質なものと僕は考えている。しゅわーんしゅわーん、という演出、キラキラとまばゆい光、そして高レアのキャラを当てるこの射幸感。つまりヒトの脳をズブズブにしていくのだ。そうで無ければ僕という存在がこれら"魔法のカード"の類を、周囲にばら撒けるほどにゲームへつぎ込んだりはしない。クソが、オレは水着クリオネ・マンを当てるまで回し続けるぞ。
「ちんちん見せろよー」
 僕は奴隷なのだ。クリオネ・マン───ゲームメーカー弁天堂社の看板キャラクター。空を穿ち、海を割り、大地を破くスーパースター―――の虜だ。その圧倒的といわれる強さ、とぅるんとした頭部、頑なに突き通すヒーロー精神に痺れるのだ。浅ましくもその筋骨隆々の体躯で抱きしめて欲しい。爆発的な熱量をオレにぶつけて欲しい。抱いて! クリオネ・マン!
「ちんちんをさぁ~? ねぇ聞いてる?」
 白熊がやかましい。それはそれとして、あろうことかこのスマートフォン対応ゲーム『王剣の標』はイベントガチャにおいて、あのクリオネ・マンの期間限定水着カードを実装した。これまた本当に全年齢向けなのかと疑われるような股間のもっこりに僕ははち切れんばかりになってしまった。僕の犬シッポは千切れんばかりなのだ。財布は逆に急激に痩せている。許すまじ、許すまじ。
「ねぇ」
「なんだ、さっきから。やかましいぞ。僕はガチャを無心に回しとるのだ」
「大川のちんちんみせて」
「なんで僕がチンポを見せなければならんのだ。その暇があればガチャを回すぞ」
「ぼくはクリオネさんじゃなくて君のちんちんが良いのになぁ」
「オレはクリオネ・マンを引くまでガチャを回すッ!!! うおおお」
「えぇ」
 ぶつくさうるさい熊だ。その白いガワも眩しいのだ。特に夏場はデカくてアツイし。しろくまでも食べておくがいいのだ。
「大川はぼくのアイスの好みわかってるよねぇ」
「一体何年聞かされてると思ってるのだ。あああ☆5カイガラ将軍、貴様では無い……」
「もう五年くらいだねぇ。考えてみれば」
「石が切れた、くそったれめ。何十連したと思ってやがる」
「ついでにしろくま買ってきてよ」
「仕方ない奴め。二つだな」
「わかってるぅ」

「…………。」
「よかったじゃない大川」
「あぁ、クリオネ・マン。我がクランへ、ようこそ……素材は既に用意済みだ」
「ちんちん見せてよ大川」
「このたるんだ腹め」
「お腹つついてないでちんちん……」
「昨日も見ただろう」
「今日の分だからさぁ」
「詮の無い奴だな。見せてなどやらんわ」
「えぇ」
「貴様はしろくまでも食べておくがいい」
「二つあるんだから大川も食べようよ」
「そうだな。あぁ、このやりとりも何年しているのか」
「もう五年くらいだねぇ」

#40

「やぁ、イツキ殿。ご機嫌はいかがですかな?」
モリタカ?」
「拙者は、接写は、夏色のてふてふが真空管から逆立ちで溶け出すようなソテツの根。コップ一杯のはじめましてが目覚める黄色でありますよ」
「?」
「ですからぁ、帽子の点々があるまじきサイリウム形状の、外堀を埋めるは確かな味わい深い、アダマンタイトとも言われる裏口のお猪口! 拙者のもふもふが要りようでありますかな? あれ、何処へ?」
「すまぬ、犬武者よ。今は我が腕で眠れ……」
「は、謀りおったな、秤折ったな……!」

「今は奥でお休みですわ。しかし、災難でしたわねぇ御館様」
「僕、凄く恐いよ。このまま暑かったらみんなこんなになっちゃうんじゃ……?」
「そのためのクーラー、そのためのリゾートですわ。御館様のお連れなら特別待遇させて頂きます。いつでもお越し下さいね」
「わかった。ありがとうハクメンちゃん……」
「お飲み物を用意しましょ。あちらへどうぞ」

「おやベイビー達。皆はコーラが良いかな?」
「ありがとうサンバさん。バーは大丈夫なの?」
「今は閉じさせて貰ってるよ」

「ここ、どこ?」
「砂漠だなァ」
「うわ、ゴウリョウさん。砂漠にサーフボードってどうなの」
「知らねぇよ! オレはリゾートにいたはずなのによォっ!」
「あ、なんか来た」
「何だぁ? あいつら船の仕事はどうしたんだ?」
「おうおうーーっ! オイラ様海賊ポール様だぜーッ! 大人しく荷物置いてけ、ってゴウリョウさんじゃねぇか!」
「どういうことなの?」
「異界化かぁ、面倒臭ぇなぁ」