ちんちんしろくまとガチャ

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「ねぇ、ちんちん見せてよ」
 ガチャゲー、俗に言うソシャゲというのは依存性、中毒性ともにとても悪質なものと僕は考えている。しゅわーんしゅわーん、という演出、キラキラとまばゆい光、そして高レアのキャラを当てるこの射幸感。つまりヒトの脳をズブズブにしていくのだ。そうで無ければ僕という存在がこれら"魔法のカード"の類を、周囲にばら撒けるほどにゲームへつぎ込んだりはしない。クソが、オレは水着クリオネ・マンを当てるまで回し続けるぞ。
「ちんちん見せろよー」
 僕は奴隷なのだ。クリオネ・マン───ゲームメーカー弁天堂社の看板キャラクター。空を穿ち、海を割り、大地を破くスーパースター―――の虜だ。その圧倒的といわれる強さ、とぅるんとした頭部、頑なに突き通すヒーロー精神に痺れるのだ。浅ましくもその筋骨隆々の体躯で抱きしめて欲しい。爆発的な熱量をオレにぶつけて欲しい。抱いて! クリオネ・マン!
「ちんちんをさぁ~? ねぇ聞いてる?」
 白熊がやかましい。それはそれとして、あろうことかこのスマートフォン対応ゲーム『王剣の標』はイベントガチャにおいて、あのクリオネ・マンの期間限定水着カードを実装した。これまた本当に全年齢向けなのかと疑われるような股間のもっこりに僕ははち切れんばかりになってしまった。僕の犬シッポは千切れんばかりなのだ。財布は逆に急激に痩せている。許すまじ、許すまじ。
「ねぇ」
「なんだ、さっきから。やかましいぞ。僕はガチャを無心に回しとるのだ」
「大川のちんちんみせて」
「なんで僕がチンポを見せなければならんのだ。その暇があればガチャを回すぞ」
「ぼくはクリオネさんじゃなくて君のちんちんが良いのになぁ」
「オレはクリオネ・マンを引くまでガチャを回すッ!!! うおおお」
「えぇ」
 ぶつくさうるさい熊だ。その白いガワも眩しいのだ。特に夏場はデカくてアツイし。しろくまでも食べておくがいいのだ。
「大川はぼくのアイスの好みわかってるよねぇ」
「一体何年聞かされてると思ってるのだ。あああ☆5カイガラ将軍、貴様では無い……」
「もう五年くらいだねぇ。考えてみれば」
「石が切れた、くそったれめ。何十連したと思ってやがる」
「ついでにしろくま買ってきてよ」
「仕方ない奴め。二つだな」
「わかってるぅ」

「…………。」
「よかったじゃない大川」
「あぁ、クリオネ・マン。我がクランへ、ようこそ……素材は既に用意済みだ」
「ちんちん見せてよ大川」
「このたるんだ腹め」
「お腹つついてないでちんちん……」
「昨日も見ただろう」
「今日の分だからさぁ」
「詮の無い奴だな。見せてなどやらんわ」
「えぇ」
「貴様はしろくまでも食べておくがいい」
「二つあるんだから大川も食べようよ」
「そうだな。あぁ、このやりとりも何年しているのか」
「もう五年くらいだねぇ」