#39

「おはようヨルヲ」
「えっ」

「マガン兄ちゃん、今日は海に行くって」
「おうよ。ついてくっか」
「いく」

「チャリンコあつあつだー」
「座ってりゃなれるだろ。捕まってろよ」
「しっぽえへへ」
「いじんなボケ」
「兄ちゃんの背中広いな」
「だろ」

「おう兄弟、焼きそば2つ寄越せよ」
「なんだとっ。テメェ金払いやがれ」
「兄弟のよしみだろ」
「ヨルヲの分はまだ良いがテメェの分まではダメだな」
「ツケだツケ」
「ありがとうノマ兄ぃ」

「へへはへ」
「あぁくそったれ。シャツが貼り付いてやがる。ぐおお」
「破っちゃだめだよ」
「絞るだけだよ」
「それ」
「てめぇ今かけんのは反則だぜ。沈めてやる」
「あばば」


「なあ」
「なに?」
「楽しかったか?」
「ふふ、楽しかった」
「じゃあ、帰ろうぜ」
「いやだ」
「ヨルヲ」
「帰りたくない」
「ヨルヲ」
「帰りたくないよ、ずっとこのままがいい」
「オレたちは帰んなきゃなんねぇ。わかってんだろ」
「やだ、やだよ……」
「ワガママ言ってんじゃねぇぞ、なぁ」

「ねぇ、また、来れるかな」
「さぁな。本当は来ちまったらいけなかったんだ」


「ヨルヲ、大丈夫かぁ?」
「……マカラさん」
「この時期に海に近づいたら、いけねぇぞ。おれとの約束だぁ」
「わかっ、た。ありがと」
ノーマッドとマガンにも礼を言うんだなぁ。2人ともお前さんを助けに行ったんだぞぉ」
「そうする。そうするよ……」

#38

「暑ないすか?」
「今さら?」

冷やし中華ひとつ……「俺分も頼んで」あ?すいませんやっぱ二つで」
「あちぃ~っすよマガミさん」
「お前俺はもっと暑いかんな。毛皮舐めんな」
「いやそりゃそっすけどさー、暑いもんは暑いんすよ人間様もよー」
「おら、お冷やだぞお冷や」
「ひぇひぇ。聞きました? プール干上がったって」
「おかしいだろ。また溜めればいーじゃんよ。なんだ、太陽は俺たちをコロすきか」
「きっと『太陽光線でアツアツになりなさァ~い!』とかふざけてんすよ。ハクメンちゃんみたいな子が……」
「そういやハクメンさんリゾート開いたってな。あっつ」
「きっとマッチポンプっすよ絶対そうだちげねぇ」

「ぶへへいい尻してやがるぜ」
「さよかぁ」
「なんだよ淡泊だな」
「ゴウリョウはんに言われてもなぁ。ワイはご主人はんに魂売っとんのや」
「んだよつれねぇなァ。まぁいいけどよ」
「せや、お仕事終わったんなら手伝ってくれへん? これ細かくてかなわんわ」
「……しゃーねぇな、やってやんよ」
「おおきにぃ」

「ちょっとだけ、似ているでありますな!」
「おっ、そうかい? そうだな! 確かに……」
「こう、腕が剛いといいますか!」
「あ、腕と言えば」

「あ? なんじゃ、クロガネに連れてこられたと思えばタヂカラオじゃねえか。鍛えとるか?」
「アマツマラ殿ではありませぬかぁ。鍛えておりますとも! もちろん! ぬははっ」
「えっ。なんだよぉ、2人とも知り合いかよぉ」

#37

「祭り、終わっちゃったね」
「寂しいのであります。次の祭りはいつでありますかぁ?」
「その寂しさ、僕じゃ紛らせないかな」
「教官殿……」
「ダメですヨルヲさん。ゴロウさんから言われてるんで」
タヂカラオ~~っ」
「あぁっ、教官殿!」

「くぅっ……! マルコシアス殿と祭りを回りたかった」
「ほらアンタも帰りますよさっさと」
マルコシアス殿ォッ!」
「祭りで無くともいつでも会えるでしょ」

「大収穫だね、ゴロウ」
「そうだね」
「これでやっとザオウ先輩とツァトグァさんがより強くなる……あぁ、でも火の車なのは変わらないな。食費に光熱費に、アンドヴァリさんにも話を通して……」
「シロウ、君はとりあえず休むべきだ。もう日付も変わりそうだ」
「そう、だね。ありがとう。とりあえず明日やることだけでも列挙しておこう……」
「僕が飲みたいし、ココアを作るよ。シロウもいるかい」
「それじゃ、頼もうかな」
「……シロウ、君には感謝している。君がいなければこのギルドは成り立たない」
「そう、かな。それならうれしいよ……サモナーズは俺たちの家だから、それを支えられるのは、とてもやり甲斐がある」
「そうか、ありがとう」

「お腹空いたでござるぅ~」
「我もであーる。ハチミツスイーツを所望するであるが……」
「今は拙者たちしかいないでごさるよ」
「仕方ないのであーる。ボウルの中にハチミツと卵と牛乳と食パンをぶち込むのであーる」
「わかったでござる」
「綺麗な色がつくまで焼くのであーる。そしたらハチミツとシナモンをかけるのであーる」
「おいしいでござるよ」

#36

「世界を滅ぼすのが我の役割」
「役割に縛られる必要はないんですよ」
「むう」
「コーヒーでも飲みましょう」
「ケーキを出そう」
「ボクはクッキーを出してくるよ」
しんやくうううんわたしわたしあなたのためにっ!」
「はいはい」
「はいはい」
「今日もすみません」
「仕方ないことだから」

「まつりじゃぞ~」
「歌舞伎町の話でしょう。我々には関係の無い事です」
「急におぬしのコスプレがしとうなったぞい。あてつけじゃ」
「服が伸びるのでやめてくださいませ。紅茶をお持ちしました」
「おお、すまんの。お主も食べよ~」
「仰せの通りに」
「やっぱ堅いのぉ。素直にわしと食べたいければそうすれば良いのに」
「む、特にそういうことがあるわけではいりませんが。私はまだ職務がありますのでそれを優先しても?」
「おえーーダメじゃ……わしが一緒に食べたいんじゃ」
「仰せの通りに」

「黄昏の、再現か」
「どうかした、フェンリル先輩?」
「何でもない。ただ泡沫に消えゆく思考の一片……砂漠の一粒砂、大海の一滴にすぎぬ些末事。それより鷲獅子よ、こいつをどう思う」
「え?なんだこれ?細い金属棒、って感じか。やたらぬらぬらして生臭いなぁ、それに少し温かい」
「我が猛き剛直から引き抜いたばかり、欲を磔にする杭だ。貴様も試すが良い」
「シトリー、それは今すぐ捨てるんだ。フェンリルさんいい加減にしましょう」

#35

「タリィ~シュウイチさんったらオイラを奴隷のように扱き使うんだよ、海賊よりずっと賊だよ」
「いや、むしろ何でそうなるのが見えてるのにカード勝負したんだよ。勝てる訳ねぇだろあの人によ」
「え? なんで?」
「無知かぁ、そうかぁ。今回で懲りたらもう勝負すんなよ」
「むうう、いつか勝ってみせるもんね! オイラが次は扱き使ってやるんだから!」
「喋ってねェーで仕事しろ。どやされるぞ船長に」
「ひゃいっ」

「勇者よ」
「おや、チェルノボーグさん」
「少し手のひらを見せてはくれないか」
「?」
「ふむ……ヨルヲ殿よりサンゾウ殿の方が大きくごつごつしているのだな。そして手触りはさらりとしている。誠に勇者らしい。生命線は長めであるな」
「何を見ているんですか?」
「ああ、いや。我が友から手相というものを教わってな。興味があったので見させてもらったのである。急ですまない」
「手相……?」
「それにしても勇者は逞しい手をしている。これが、人を守る者の手か。そうか」

「知らない人について行っちゃダメだって言ったじゃないか」
「す、すみません先輩! てっきり関係者の方かと思ってました……自分、一生の不覚っす。もう知らない人には何があっても付いていきません! 押忍!」
「しかし、ノブハルを酷い目にあわせようとした奴ら、許せないなぁ、許さない」
「主よ、手筈は済んでおります」
「じゃあ、やっちゃおっか。ノブハル、君は子狸にもてなされておいで。僕はちょっとしたら戻るよ」
「えっ、自分はついて行けないんすか! それは寂しいっすよ……」
「大したことじゃ無いから大丈夫だよ……本当にね。信じて」

#34

「御城主さん、出会い頭に抱きついてくるったぁ、色々のご用意は宜しいんでやすね?」
「もちろん洗ってあるよ」
「ほ、本官は向こうに行っておりますので」
「岩戸の御仁も混ざりますかい?」
タヂカラオも混ざっていいんだよ」
「ん゙ん……っ、それは……」
「アンタらいい加減巫山戯てるんじゃないよ?」

「オアアギョウブ殿……」
「え、ギョウブさんも父親枠っすか?」
「ち、父上は父上ではない……いや、父上ではなくだな、父上はギョウブ殿……?」
「いや落ち着けよ」
「オレは至って冷静だ。ちちうえは父上ではなくてギョウブ殿なのだ。ハッ!?」
「もういいっすよもう無理すんなよ」
「違う!オレは間違っても褌を盗みなどしない!」
「サイテーかよ」

「ねぇ、魂群君」
「ん?どうかしたか?」
「魂群君さ、ヨルヲにもし振られちゃったらどうすんの」
「………………。……………………。はあぁぁ…………嫌だなぁ。そんなことなんで考えさせるんだよっ」
「えっ!? そ、そりゃ、成功しそうもないし?」
「なんだと! いや、両思いに違いねぇし!」
「いや、あたしだったら自分に負けた感じがして、ちょっと告白とかためらうかもだけど」
「負けねぇ! 絶対付き合うんだ……うへへ」
「うわ、これダメだ。いや、負けるもんか……!」

#33

「隠し事は出来ないであります」
「言わない方がいいこともあるでしょうに」
「しかし」
「僕とエッチしたなんてスズカ姐さんに言うことじゃないでしょ」
「ですが」
「それもお外で。歌舞伎町を汚したなんて言われちゃうよ」
「で、でも」
タヂカラオ。つまびらかにして善いこととわるいことがあるでしょう」
「むむむ」

「いや、バレバレっすけどねぇ」
「どうした」
「ヨルヲさんの野外情交です」
「あぁ……主殿はそういう方だからな」
「容認するんすねタダトモさん」
「主殿やマルコシアス殿に頼まれればオレも悦んでそうしよう」
「知ってた~」
「さぁ、私語より気を張り給え。敵性存在の位置を把握するのだ」
「やってますよ。今んとこは全然平気そうですよ、流石ヨルヲさん。エロ方面ではホウゲンさん……にも引けを取らない。ハァ」
「儂を呼んだかの?」
「帰れジジイ!」

「お祭りかぁ」
「行きたいのかイツキ」
「え?まぁね……」
「何も心配する必要は無い。サモナーズは私達がいるからな。存分に楽しんでくるがいい」
「ニコは、一緒に行きたい人とか、いるの?」
「? 私か? 一緒に、という者は特には居ないぞ! なんだ、私と行きたいのなら先に言えば」
「あぁいや別に。そういうわけじゃないない」
「なんだ。そうなのか」