#27

「名前、ですか?」
「そっすね」
「確かに……あなたは名前が無いのでしたね。渾名の"マガミ"が浸透してますけど」
マリアさん、あの、言いにくいんすけど」
「ええ。本来の名ではありません。しかし」
「しかし?」
「私は"マリア"になりたい、そして"マリア"たりたく思っていますから。貴方は、どうですか。"マガミと名を付けられた転光生"でいたいと思っていますか?」

「ねぇねぇレイブ先輩?」
「ん~?」
「散歩しなきゃですよぉ?」
「デブには外は暑ぃんだよ。お前も毛むくじゃらデブだろ、わかんだろ?」
「お正月にも似たようなへりくつ言ってましたよね? 冷房の効いた部屋でずっとじっとしてちゃいけないんですよぉ」
「そういえばお前犬だったな。散歩なら一人で行ってこい。しっしっ」
「ひどーい! フェンリル先輩~どうにかしてよぉ!」
「日輪の、灼熱届かぬ酷寒の神殿に、睡る猛獣よ……っ、今こそ従僕と、共にその力振る、う時。さあ、我を引き摺り回すが良い!」
「せめてローターのスイッチ位は切って欲しかったぞ。断る。おやすみ……」
「あーー! だめだってばーー!」
「震卵ではない……震角だっ」
「どっちでもいい……すやぁ」

「罪だ」
「どうなさったかイツキ殿」
「久しぶりに会ったら先輩、バーゲストさんの話しかしないんだ」
「毎回そうではござらんか……」
「やれ『バーゲストさんのパンツが』どうの、やれ『バーゲストさんの匂いが』どうの」
「あの御仁いつもキツいでありますなぁ。イツキ殿には余計そうでありましょう……推察いたす」
「へへ、ごめんね」
「なんの。拙者と主の仲でありましょう? さて、竹刀の点検が終わり申した。気分転換に一つ手合わせでも」
「いいね、やろう」