#10

「ハァ」
「オニワカさんどうしたの?」
「いや、ご主人が一人山に居るからな。今」
「ストーカー?」
「違えよ」
「ボク達は今は休んでていいんだよ?」
「そうだけどなぁ。気になるんだよなぁ。うん」
「たしかにヨルヲさんはボクよりも危なっかしいところあるけど、平気だよ。つよいもん」
「まぁ、そうだな。言うじゃねぇかふわもこめ」
「うわぁくすぐったいよ」
「あ~……あったけぇ。あったけぇなカーシー」
「ボク、もしかして臭い?」
「ぁ? いや、別に。ハァ」

「少年よ、今日はハンバーグとアルファルファのサラダだ」
「……!」
「美味しくできているだろうか?私も勉強中の身でな、食の快楽を突き詰めてみようと思うのだ……そうか。美味いか」
「!!」
「ハンバーグの中にチーズを入れてみた。チョウジ先生の授業で学んだ事だ……そうか。美味いか」
「……っ」
「ふふっ、料理を熱心に食べて貰うというのは、このような物なのか……そうか。美味いか」
「……。」
「美味かったか。さぁ、共に皿を洗おう。今度はホロケウカムイ先生にも話を聞きに行こう」

「お疲れ様です先輩。コーヒーです」
「お、おっ? 済まない、ヨウル。淹れてくれたのか」
「僕も飲みたくて。角砂糖は幾つにします?」
「う、うむ。三つで」
「進捗、どうですか?」
「うむ。まだ先は長い。しかし、ずっとパソコンの前でキーを叩いていると、目も疲れるし肩も凝るな。ふぅ」
「先輩が液晶用に眼鏡買うっていうから、なんかこう、凄くシャープなもの想像してましたけど。まさか丸眼鏡とは」
「印象が柔らかくならないか?強面も、和らぐんじゃないか、と思ってな」
「そうですね……僕は見慣れちゃったけど、なんとなくそんな感じはします。でも、先輩が本を書くのかぁ……この間の新刊、読みましたけど。僕にはちょっと難しかったです」
自費出版だがな。マニア向けだから仕方が無いだろう」
自費出版って凄くないですか?なんだか言葉だと、世界を巡る冒険家の冒険記、とか、
財を築いた社長の自伝が~とか、そんなイメージです」
「はっは、そんな大それた物じゃ無い……今の時代、多くの人が本を作ってるんだ。ヨウルだってやろうと思えばできる」
「僕もかぁ……でも書きたい事無いですし。先輩、クッキーいります?」
「頂こうか」