#20

「わっはっは」
アルスラーン様、わっはっはでは済みません。あれほどスコーンはすぐに召し上がるよう申し上げたはずですが」
「少し居眠りしただけではないか。木陰は涼しぅてのう」
「その結果がこれでございます。ご覧下さい、このはちみつたっぷりのスコーンに群がる蟻達を」
「元気に働いておるの。健気じゃ」
「台無しではありませんか……私は他でもない、貴方に召し上がって欲しかったのです」
「むう……」
アルスラーン様」
「わかったわかった。すまなんだ、ザバーニーヤよ。これからはすぐに食べる。何か埋め合わせでもしよう」
「私は……貴方様に召し上がって頂ければ満足でございます」
「わしが埋め合わせをしたいのじゃ、少し待たれよ。そのうちなにかしようぞ」

「はぁ~。レイブ先輩とカーシー君のお誘い、どっちを受けようかなぁ。その前にレポートも進めておかないといけないし……」
「ジャンバヴァン、お仕事よ」
「うわっ! 急に部屋に入ってくるのやめてよって言ってるじゃないかぁ!」
「たとえ貴方がマーチヘアだとしても私はぜんぜん気にしないしどうだっていいわ。きちんとお茶会に出てくれば言うことはないのよ」
「君がどうだって僕は気にするんだよ!」
「ぐずぐずしないの。急がないとうさぎ穴に蹴落とすわよ」
「そんなぁ」

「タダトモさん、ちょっと臭いです」
「シャワーは浴びているぞ」
「あ、違くて。この物資移動、"匂います"」
「どれ……ふむ、たしかにこの流れは明確に準備だな……進言しよう。貴様も来い」
「え? 俺もっすか」

「たしかに、これは決定的だ。良く見つけたね、あー……マガミ君?」
「なんかすいませんねなんか」
「主君。如何致しましょう」
「うん。追って指令は下げるけど、たぶん焚きつけることになると思う」
「御意、我らは一度下がります」

「ボクは焚きつけるのはあんまり賛成できないな、ゴロウ」
「やぁサンゾー。隠れてないで堂々と聞いててよかったのに」
「隠れてなどいないさ。そこに立っていただけだ」
「必要だから、こうするのさ」
「本当にそれは必要なのか?」
「当然だろ。時間は限られているんだから」